GUIDELINE
数字で見るクリニック集客の設計図|月次5指標とKPIシート活用法

目次
この記事で分かること(要約)
クリニックの集客は感覚で運営してもいずれ頭打ちになります。先月、自院のホームページから何件の予約が入りましたか。それを生み出すために月いくら投資しましたか。指名検索やGBP(Googleビジネスプロフィール)からのアクション数、そして初診単価とLTV(生涯顧客価値)まで含めて、月1回30分の作業で経営状態を可視化できる仕組みがあれば、改善はぐっと速くなります。本記事は「クリニック集客の設計図」シリーズ全10本の数字をひとつのKPI(経営の主要指標)シートに集約し、院長が経営判断に使えるハブガイドです。なおSEO(検索エンジン最適化)・MEO(地図検索最適化)といった専門用語は、各章の初出時に括弧で補足します。
この記事で分かる3つのこと
- クリニックが月次で測るべき5指標(月間問い合わせ数・CPA・指名検索数・GBPアクション数・LTV/初診単価)の定義と取り方
- KPIシートの使い方(本文内テーブルをコピーして使う計算手順)と、業界平均との比較ライン(CPC:1クリック単価/CPA:1問い合わせ単価/CPA÷LTV比率)
- シートで見える3つの改善ポイント、診療科別の試算例3パターン(仮想シナリオ)、そして次に読むべき他9記事への誘導順序
読む順序のおすすめ
- 何から測ればいいか分からない先生 → 「測るべき5指標」章へ
- 既にデータはあるが改善ポイントが見えない先生 → 「シートで見える3つの改善ポイント」章へ
- これから集客に投資する先生(試算例を見て判断したい) → 「計算シミュレーション3パターン」章へ
- 他9記事を読む順序を知りたい先生 → 「次に手を打つ順序」章へ
なお、本記事は「クリニック集客の設計図」シリーズ全10本のハブ記事として、当社が10年以上、医療領域のWebメディアの企画・運営に携わってきた経験から執筆しています。
【数値根拠の注記】
本記事に記載するCPC・CPA・問い合わせ件数・指名検索数等の数値は、当社が運営する医療メディアおよび支援先クリニック10院・2025年4月〜9月の6か月実績平均、ならびに公開情報から導いたおおよその目安です。診療科(内科/皮膚科/美容クリニック/AGA等)・地域・自由診療の有無により大きく変動するため、参考値として扱い、自院の実数と並べてご判断ください。
クリニックが月次で測るべき5指標

「測らない経営」が頭打ちになる理由
「広告費はかけているが、問い合わせが何件来ているか正確に答えられない」「ホームページのアクセス数は見ているが、来院に繋がっているかは分からない」——これは集客で頭打ちになるクリニックに共通する状態です。数字を測らないと、何が効いて何が効いていないかが判断できず、毎月同じ予算を使い続けることになります。
逆に、月次で5つの指標を見る習慣がつくと「先月より問い合わせが減ったのは指名検索が落ちたからだ」「CPAが上がったのはリスティングの新規キーワードが効いていないからだ」と、原因と対策が30分で結びつきます。
5指標の選定基準
月次で見るべき指標は無数にありますが、院長が経営判断に使えるレベルに絞ると以下の5つで十分です。
- 量を測る指標:月間問い合わせ数(CV数)
- 効率を測る指標:CPA(1問い合わせあたりの費用)
- ブランドを測る指標:指名検索数
- 来院直前を測る指標:GBPアクション数
- 経済価値を測る指標:LTV/平均初診単価
この5つで「集客の量」「投資効率」「自院ブランドの浸透」「来院アクション」「1患者の経済価値」を一望できます。サイト滞在時間・直帰率・ページビュー等の細かい指標は、改善を担当する業者やマーケッターが見る数字で、院長が月次で見る必要はありません。
指標1:月間問い合わせ数(CV数)
最も基本的な指標で、ホームページのお問い合わせフォーム・電話・LINE・予約システム経由の新規予約数の合計です。
- 取り方:フォーム送信完了ページにGoogleタグマネージャでCV計測を設定/電話発信は計測用転送番号を使う/予約システムは管理画面の月次レポートを使う
- 目安:開業1年目で月3〜8件、3年目で月8〜15件、5年目以降で月15〜30件(P2のSEO効果推移と整合)
- 注意:既存患者の再診予約や物販のみは含めない。新規の意向表示(初診相談・予約・資料請求)に絞る
問い合わせ数の上下だけ見ていると「広告費を増やせば伸びる」「景気が悪いから減った」といった単純化に陥りがちです。次の指標CPAと組み合わせて初めて意味を持ちます。
指標2:CPA(コスト・パー・アクション)
問い合わせ1件あたりの集客コストです。クリニックの集客で最も実用的な効率指標で、広告・SEO・GBP運用すべての費用を分母に入れて算出します。
- 計算式:CPA = 月間集客コスト合計 ÷ 月間問い合わせ数
- 集客コストに含めるもの:リスティング広告費/SEO業者の月額/GBP代行費/ホームページ更新費/自院でやっている時間の概算人件費(時給5,000円換算で月20時間なら10万円)
- 目安:首都圏内科で改善前 15,000〜20,000円、改善後 5,000円以下(P2の支援実績 16,700円→3,600円と整合)/美容クリニックで 20,000〜50,000円(CPCと初診単価が高いため)/AGAで 15,000〜30,000円
- 判断軸:CPAは絶対値で判断するのではなく、後述の「CPA/LTV比率」で判断する
CPAだけ見て「下げよう」とすると、流入が減り問い合わせ数自体も減ることがあります。CPAは初診単価とセットで判断する必要があります。
指標3:指名検索数
「自院の名前」または「自院の名前+エリア名」で月間に検索された回数です。広告に頼らずブランドが浸透しているかを示す指標で、長期的な集客の安定性を測ります。
- 取り方:Google Search Consoleで「○○クリニック」「○○クリニック + 地域名」のクエリ表示回数を集計/GoogleキーワードプランナーでもVolが見える
- 目安:開業1年目で月10〜50回、3年目で月100〜300回、5年目以降で月300回以上(地域人口や診療科で大きく変動)
- 増やす施策:症状ページの量と質(C7 違反リスクのない症状ページの書き方)/GBP運用(C6 GBP編集 院長の最初の6手順)/口コミ獲得(C8 クリニックの口コミを増やす12の方法)
指名検索数が伸びているクリニックは「リスティングを止めても問い合わせが減らない」状態に近づきます。広告費削減の前提として必ず見る数字です。
指標4:GBPアクション数
Googleビジネスプロフィール(GBP)の管理画面で確認できる「電話タップ」「ルート検索」「ウェブサイトクリック」の合計値です。MEO(Map Engine Optimization:地図検索最適化、Googleマップで上位表示させる施策)の効果と、来院直前のユーザー行動を直接測ります。
- 取り方:GBP管理画面 → 分析 → 月間レポートから3項目を抽出
- 目安:開業1年目で月50〜100アクション、3年目で月200〜500、5年目以降で月500以上(C6の地域差を反映)
- 増やす施策:プロフィールの完成度(写真・診療時間・診療メニュー・特徴)/月1〜2回の投稿/口コミへの返信率(C6 GBP編集の最初の6手順)
GBPアクション数は「ホームページに到達する前のユーザーの反応」を捉えるため、ホームページ単体の改善では伸びません。GBP運用の手をかけた分だけ伸びる、極めて正直な指標です。
指標5:LTV/平均初診単価
1人の患者が自院に通うことで生み出す総売上です。CPAを判断する際の分母として機能します。
- 計算式(簡易版):LTV = 平均初診単価 × 平均再診回数 × 平均治療継続月数
- 取り方:レセコン/電子カルテの患者別売上集計から半年分をサンプリングして算出
- 目安:保険診療(一般内科)で初診1〜2万円・LTV 2〜5万円/保険診療(皮膚科・整形外科)でLTV 3〜8万円/自由診療(美容)で初診5〜15万円・LTV 15〜50万円/AGAでLTV 30〜100万円
- 判断の使い方:CPA/LTV 比率が0.3以下なら健全(C9のROI判断軸)、0.5を超えると赤信号
LTVが分からないままCPAだけ下げようとすると、本来採算が取れる広告まで止めてしまう判断ミスが起きます。LTVは必ず半年に1回は更新する数字です。
月次KPIシートの使い方(本文テーブル+計算手順)

5指標を1枚のシートで「同時に」見る意義
前章の5指標は、個別に見ても意味が薄い数字です。「問い合わせ数だけ」「CPAだけ」を見ても、量・効率・経済価値のバランスが崩れているかが分かりません。5つを同じシート上で並べて、3〜6か月の推移を一望することで初めて、「量は伸びているのに効率が悪化している」「効率は健全だが量が頭打ち」といった経営判断の材料になります。
本文内テーブルをコピーして使う
「無料計算シート配布」と他記事で予告していた内容は、本記事のテーブルをそのままコピーして自院のスプレッドシートに貼り付ければ即使える形でご用意しました。ダウンロード不要・登録不要・1枚で6か月分の推移を一望できます(コピー時にセル幅は自院でお好みに調整してください)。
基本テンプレ:月次KPIシート(6か月推移)
| 月 | 月間集客コスト合計(円) | 月間問い合わせ数(件) | CPA(円) | 指名検索数(回) | GBPアクション数(件) | LTV/初診単価(円) | CPA/LTV比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | |||||||
| 2月 | |||||||
| 3月 | |||||||
| 4月 | |||||||
| 5月 | |||||||
| 6月 |
使い方の3ステップ:
- このテーブルをコピー → Googleスプレッドシートまたは Excel に貼り付け
- 月初に前月分の数字を5列埋める(コスト・CV数・指名検索・GBPアクション・LTVは半年に1回更新)
- CPA と CPA/LTV比率の2列は計算式で自動算出(CPA = コスト÷CV数、比率 = CPA÷LTV)
最初の3か月分は過去データを遡って埋めれば、すぐに推移が見えます。
集客コストの内訳テーブル(参考)
「集客コスト合計」をどう積み上げるか、内訳のテンプレも置きます。
| 費目 | 金額(円/月) | 算出根拠 |
|---|---|---|
| リスティング広告費 | Google広告/Yahoo広告の請求額 | |
| SEO業者の月額 | 契約書の月額固定費 | |
| GBP代行・MEO業者の月額 | 契約書の月額固定費 | |
| ホームページ更新費 | 業者請求 or 自院の時給×時間 | |
| 自院でやる時間の人件費(時給5,000円換算) | 院長/スタッフが集客に使った月間時間×時給 | |
| 集客コスト合計 | 合計 | – |
自院で広告・SEO・GBP運用を内製している場合、人件費を入れ忘れるとCPAが過小に見えてしまいます。時給5,000円(年収1,000万円換算)で概算するのが分かりやすい目安です。なお、院長ではなくスタッフが担当している業務でも、「集客に使った時間」は同じロジックでスタッフの時給ベースで集計に含めます。「人件費は給料に含まれているから無視していい」と切り捨てると、外注したほうが安く済む業務まで内製し続ける判断ミスに繋がります。
指名検索数の集計手順
Search Consoleでの集計は最初だけ少し手間ですが、設定すれば毎月3分で済みます。
- Search Console管理画面 → 検索パフォーマンス
- 期間:先月1日〜末日
- 「検索キーワード(クエリ)」列で自院名を含む行をフィルタ(例:「○○クリニック」「○○クリニック 駅名」「○○クリニック 院長名」など)
- 該当クエリの「表示回数」の合計値を取る
クエリのフィルタは正規表現が使えるので「(○○クリニック|○○医院|○○内科)」のようにまとめて抽出すると効率的です。
GBPアクション数の集計手順
GBP管理画面でも月次レポートが見られます。
- GBP管理画面 → 「分析」または「インサイト」タブ
- 期間:先月1日〜末日
- 「ウェブサイトクリック」「ルートのリクエスト」「通話」の3項目の合計値を取る
PCで運用していない先生は、Googleマップアプリの「ビジネスとして利用」モードからも同じ数字が見られます。
LTV/初診単価の算出手順
LTVは半年に1回の更新で十分です。
- レセコンまたは電子カルテで、過去6か月以内に初診で来院した患者を抽出
- その患者ごとの累計売上(初診〜現在まで)を集計
- 患者数で割って平均値を算出
- 6か月分の累計ではまだ「途中」なので、診療科別の標準的な継続月数(内科で平均3〜6か月、皮膚科で1〜3か月、美容で1〜6か月など)で補正
時間がない先生は、初診単価×継続月数のシンプルな掛け算で代用しても構いません。
業界平均との比較ライン(CPC・CPA・CPA/LTV比率)

比較ラインを持つ意義
自院の数字だけを見ていると「この水準が普通なのか高いのか」が判断できません。業界平均との比較ラインを持っておくと「うちは平均より高い/低い」がすぐ分かり、次の打ち手の優先度が決まります。
CPCの目安(首都圏/診療科別)
リスティング広告で「広告が1回クリックされた際に発生する費用」をCPC(Cost Per Click:クリック単価)と呼びます。地域・診療科・キーワードの競合度で大きく変動し、首都圏の目安は以下の通り。地方では7〜8割、競合の多い都心駅前では1.5倍を見ます。
| 診療科 | CPCの目安(首都圏) | 備考 |
|---|---|---|
| 一般内科 | 500〜1,200円 | P2の支援実績ベース |
| 皮膚科(保険) | 800〜1,500円 | 競合の多い都心ではさらに上 |
| 美容クリニック | 2,000〜5,000円 | 自由診療キーワードはさらに高騰 |
| AGA | 2,000〜5,000円 | 美容と同水準で競合が多い |
| 歯科(一般) | 600〜1,500円 | 自由診療メニューでは高騰 |
| 産婦人科 | 800〜2,000円 | 都心部の競争が局所的に激しい |
詳細はC9 SEO vs 広告どちらが正解?の診療科別マトリックスも参照してください。
CPAの目安(月間集客コスト÷問い合わせ数)
CPAは「改善前・改善後」で大きく差が出ます。当社の支援10院・6か月実績では、平均でCPAが約4分の1になりました。
| 状態 | 月間集客コスト | 月間問い合わせ数 | CPA |
|---|---|---|---|
| 改善前(開業1〜2年目/リスティング主体) | 20万円 | 12件 | 16,700円 |
| 改善3か月目(リスティング+SEO) | 25万円 | 18件 | 13,900円 |
| 改善6か月目(リスティング縮小+SEO拡大) | 20万円 | 22件 | 9,100円 |
| 改善12か月目(SEO主体/リスティング最小化) | 10万円 | 28件 | 3,600円 |
自院のCPAが10,000円を超えている場合、改善余地は十分にあります。逆に5,000円を下回っているなら、すでに健全な水準です。
CPA/LTV比率の判断軸
CPAの絶対値だけでなく、LTVと比較した比率で判断するのが本来の見方です。
| CPA/LTV比率 | 判断 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| 0.1以下 | 過剰に効率的 | 集客投資を増やす余地あり |
| 0.1〜0.3 | 健全 | 現状維持/効率改善より量の拡大に投資 |
| 0.3〜0.5 | 注意 | CPA改善 or LTV向上の施策を1〜2手 |
| 0.5以上 | 赤信号 | 集客チャネルを根本的に見直す |
LTV 3万円のクリニックでCPAが15,000円(比率0.5)なら、その広告は赤字一歩手前です。LTV 30万円の美容クリニックなら同じCPA 15,000円でも比率0.05で、もっと投資を増やしてもいい状態です。
指名検索数とGBPアクション数の目安
指名検索数とGBPアクション数は、業界平均というより自院の時系列推移が重要です。
| 経過期間 | 月間指名検索数 | 月間GBPアクション |
|---|---|---|
| 開業1年目 | 10〜50 | 50〜100 |
| 3年目 | 100〜300 | 200〜500 |
| 5年目以降 | 300以上 | 500以上 |
毎月10〜20%ずつ伸びていれば健全。3か月連続で横ばいまたは下降なら、コンテンツ更新やGBP投稿の頻度を上げる必要があります。
KPIシートで見える3つの改善ポイント

KPIシートが教えてくれること
5指標を3〜6か月並べると、伸び悩みの原因が「量」「効率」「経済価値」のどこにあるかが見えます。改善ポイントは大きく3つに集約されます。
改善ポイント1:問い合わせ数が伸びない=「入口の量」が足りない
月間問い合わせ数が6か月横ばい、または減少傾向のとき。原因は「ホームページへの流入が足りない」または「流入はあるが予約まで繋がらない」のどちらかです。
| 症状 | 原因の仮説 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 流入数も問い合わせも増えない | コンテンツ不足/指名検索が伸びていない | 症状ページの追加(C7)/GBP運用強化(C6) |
| 流入数は増えているのに問い合わせが増えない | ホームページのCVR(予約率)が低い | HP改善(P4)/予約フローの簡素化 |
| 一時的に流入が増えたが翌月減った | 単発の広告/話題のみで継続性なし | キーワード設計の見直し(C5) |
問い合わせ数が伸びないクリニックの7割は、症状ページの数(20本以下)またはGBP運用の手数(月1回未満)が足りていません。
改善ポイント2:CPAが高い=「投資効率」が悪い
問い合わせ数は出ているが、CPAが10,000円を超え続けているとき。改善の鍵はリスティング依存度の削減です。
| 状態 | 原因の仮説 | 打ち手 |
|---|---|---|
| リスティング比率が集客コストの50%以上 | 広告で買った流入に依存 | SEO移行モデル(C9)でリスティング削減 |
| 指名検索が増えていない | ブランド浸透が遅い | 症状ページ+口コミ+GBP投稿で長期投資 |
| 業者の月額が高すぎる | 効果に見合わない発注 | 月次レポートで効果検証→契約見直し |
P2の事例(クリニックSEO完全ガイド)で示したように、リスティング月20万円→0円への12か月移行モデルで、CPAは16,700円→3,600円まで改善できます。
改善ポイント3:LTVが上がらない=「1患者の経済価値」が低い
集客は順調なのに、1院あたりの売上が伸びないとき。原因は「初診単価が低い」または「再診が続かない」のどちらかです。
| 症状 | 原因の仮説 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 初診単価が低い(自由診療メニューの説明不足) | ホームページで自費の選択肢が見えない | HP改善(P4)で自費メニューの導線追加 |
| 再診が続かない(治療継続率が低い) | 予約の取りやすさ/フォローアップ不足 | LINE予約/フォローメッセージ |
| 口コミの星3〜4で迷う患者が多い | 口コミ品質の低さ | 口コミ運用(C8)で星5を増やす |
LTV改善は院長の臨床判断と直結する領域です。集客側の打ち手だけでなく、自費メニューの設計や予約システムの改善とセットで検討します。
3つの優先順位の決め方
3つすべてに同時に手を打つのは現実的ではありません。優先順位は以下で判断します。
- CPA/LTV比率が0.5以上 → 改善ポイント2(CPA改善)が最優先
- 問い合わせ数が3か月横ばい → 改善ポイント1(量を増やす)
- 集客は順調、売上は伸びない → 改善ポイント3(LTV改善)
シートに3〜6か月分のデータが入ると、この優先順位は自動的に見えてきます。
計算シミュレーション3パターン(診療科別の試算例)

試算例の位置づけ
以下の3パターンは、当社が支援してきた10院の傾向をもとに作成した試算例(仮想シナリオ)です。特定のクリニックの実例ではなく、診療科ごとの一般的な数字の動き方を理解するための学習用シミュレーションとしてご活用ください。
試算例1:内科A(開業1年目/リスティング主体/都心駅前)
前提条件:
- 診療科:一般内科(保険診療)
- 開業:1年目
- 立地:首都圏ターミナル駅徒歩5分
- 初期集客:リスティング広告月20万円
- LTV:4万円(初診1.5万円×平均2.7回再診)
6か月推移の試算:
| 月 | コスト合計 | 問い合わせ数 | CPA | 指名検索 | GBPアクション | CPA/LTV |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月(改善前) | 200,000円 | 12件 | 16,700円 | 30 | 80 | 0.42 |
| 2月 | 220,000円 | 14件 | 15,700円 | 35 | 100 | 0.39 |
| 3月(SEO追加) | 250,000円 | 18件 | 13,900円 | 50 | 150 | 0.35 |
| 4月 | 250,000円 | 20件 | 12,500円 | 80 | 200 | 0.31 |
| 5月 | 220,000円 | 22件 | 10,000円 | 120 | 280 | 0.25 |
| 6月 | 200,000円 | 22件 | 9,100円 | 160 | 350 | 0.23 |
読み解き:CPA/LTV比率が改善前0.42(注意領域)から6か月後0.23(健全領域)に改善。リスティング費を変えずSEOを上乗せしたことで、問い合わせ数が12→22件(1.8倍)、CPAが16,700→9,100円に。次の6か月でリスティング縮小→SEO主体に移行すれば、12か月後にはCPA 3,600円・問い合わせ28件まで到達する見込み(P2の標準モデル)。
試算例2:皮膚科B(開業3年目/GBP未完成・口コミ少/郊外)
前提条件:
- 診療科:皮膚科(保険+自由診療)
- 開業:3年目
- 立地:郊外住宅地(駅徒歩10分)
- 初期集客:GBP放置、口コミ12件(平均星3.8)、リスティングなし
- LTV:6万円(初診2万円×平均2回再診+外用薬)
6か月推移の試算(GBP・口コミ運用に注力):
| 月 | コスト合計 | 問い合わせ数 | CPA | 指名検索 | GBPアクション | CPA/LTV |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月(改善前) | 50,000円 | 8件 | 6,300円 | 80 | 150 | 0.11 |
| 2月(GBP月2回投稿) | 80,000円 | 10件 | 8,000円 | 90 | 200 | 0.13 |
| 3月(口コミ依頼開始) | 80,000円 | 12件 | 6,700円 | 110 | 280 | 0.11 |
| 4月(口コミ20件・星4.2) | 80,000円 | 15件 | 5,300円 | 140 | 380 | 0.09 |
| 5月 | 80,000円 | 17件 | 4,700円 | 180 | 450 | 0.08 |
| 6月(口コミ35件・星4.4) | 80,000円 | 20件 | 4,000円 | 230 | 550 | 0.07 |
読み解き:もともとCPA/LTV比率が0.11と健全な代わりに、問い合わせ数(量)が頭打ち。GBPと口コミに月8万円(コンサル+運用代行)を投じて問い合わせ数を8→20件(2.5倍)に。リスティングは使わず指名検索とGBPアクションだけで集客が伸びるモデル。詳しくはC6 GBP編集の最初の6手順とC8 クリニックの口コミを増やす12の方法を参照。
試算例3:美容クリニックC(開業2年目/自由診療100%/都心)
前提条件:
- 診療科:美容クリニック(自由診療100%)
- 開業:2年目
- 立地:首都圏中心部
- 初期集客:リスティング広告月60万円、Instagram運用、ホットペッパービューティー掲載
- LTV:30万円(初診10万円+平均2.5回リピート)
6か月推移の試算(リスティング最適化+ホームページ改善):
| 月 | コスト合計 | 問い合わせ数 | CPA | 指名検索 | GBPアクション | CPA/LTV |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月(改善前) | 800,000円 | 30件 | 26,700円 | 200 | 400 | 0.09 |
| 2月(HP改善着手) | 820,000円 | 35件 | 23,400円 | 220 | 450 | 0.08 |
| 3月(症状ページ追加開始) | 820,000円 | 40件 | 20,500円 | 280 | 520 | 0.07 |
| 4月(症状ページ20本到達) | 820,000円 | 48件 | 17,100円 | 380 | 620 | 0.06 |
| 5月 | 800,000円 | 55件 | 14,500円 | 480 | 700 | 0.05 |
| 6月 | 780,000円 | 62件 | 12,600円 | 600 | 800 | 0.04 |
読み解き:CPAの絶対値は12,600円とまだ高めですが、LTVが30万円のためCPA/LTV比率は0.04(極めて健全)。改善前から比率は健全領域でしたが、問い合わせ数を30→62件(2倍)に伸ばすことで売上自体が大きく拡大するシナリオ。美容は症状ページの量と質、ホームページの予約導線が効きやすい診療科です。詳しくはP4 ホームページ改善完全ガイドとC7 違反リスクのない症状ページの書き方を参照。
3パターンに共通する原則
3つの試算例に共通するのは「打ち手は1〜2手で十分」という点です。すべての施策に同時に手を出すと、それぞれの効果検証ができなくなります。シートで3か月の推移を見ながら、月1〜2手のペースで施策を増やすのが、最も効果検証しやすい運用です。
次に手を打つ順序(10記事を活用したクリニック集客の全体マップ)

全10記事の役割分担
「クリニック集客の設計図」シリーズは、本記事を含めて全10本で構成されています。それぞれの役割と読むタイミングを一覧にしました。
| カテゴリ | 記事 | 役割 | 読むタイミング |
|---|---|---|---|
| 法令 | P1 医療広告ガイドライン違反8類型 | 規制の全体像 | 公開前/既存HP点検 |
| 戦略 | P2 クリニックSEO完全ガイド | 全体戦略・10の設計図 | 集客投資を始める前 |
| MEO | P3 クリニックMEO完全ガイド(公開予定) | MEOの全体像 | GBP本格運用前 |
| HP | P4 ホームページ改善完全ガイド | HP制作・改善の10判断軸 | HPリニューアル前 |
| KW設計 | C5 キーワード設計はじめの3手 | 集客KWの土台設計 | SEO着手の最初の30分 |
| GBP | C6 GBP編集 院長の最初の6手順 | GBPの最初6手順 | GBP登録直後 |
| 症状ページ | C7 違反リスクのない症状ページの書き方 | 症状ページ7ステップ | 症状ページ追加前 |
| 口コミ | C8 クリニックの口コミを増やす12の方法 | 口コミ運用12手 | 口コミ星4.0以下 |
| 比較 | C9 SEO vs 広告どちらが正解? | リスティング半減ステップ | リスティング月20万円超 |
| 数字 | 本記事 C10 数字で見る設計図 | 月次KPIシート | 全施策の効果検証 |
状況別:次に読むべき記事の決定フロー
KPIシートを3〜6か月運用したあと、次に読むべき記事はシートの数字で決まります。
【A:CPA/LTV比率が0.5以上で赤信号の先生】
→ C9 SEO vs 広告どちらが正解? を読み、リスティング縮小→SEO移行のステップを設計。同時にP2 クリニックSEO完全ガイドで全体戦略を確認。
【B:問い合わせ数が3か月以上横ばいの先生】
→ まずC5 キーワード設計はじめの3手で集客KWの土台を見直し、次にC7 違反リスクのない症状ページの書き方で症状ページの量を増やす。GBP未整備ならC6 GBP編集 院長の最初の6手順も並行で。
【C:GBPアクション数が伸びない先生】
→ C6 GBP編集 院長の最初の6手順でGBP運用を立て直し、C8 クリニックの口コミを増やす12の方法で口コミ獲得を加速。
【D:ホームページのCVR(予約率)が低い先生】
→ P4 ホームページ改善完全ガイドでHP制作・改善の10判断軸を確認。予約フロー・自費メニュー導線・施設写真の3点が改善の本丸。
【E:医療広告ガイドラインの違反が心配な先生】
→ P1 医療広告ガイドライン違反8類型で全体像を把握、症状ページの不安はC7 違反リスクのない症状ページの書き方で個別対応。
【F:これから集客を本格化させる先生】
→ まずP2 クリニックSEO完全ガイドで全体戦略を、次にC5 キーワード設計はじめの3手で土台を、そして本記事のKPIシートで月次運用を開始。
【G:すでに集客はやっている、月次の振り返りを習慣化したい先生】
→ 本記事のKPIシートから運用開始。3か月分の数字を遡って埋めて、改善ポイント1〜3のどれが当てはまるかを判定 → A〜F の該当フローへ進む。
月次運用の標準フロー(30分/月)
KPIシートを使った月次運用は、月初の30分で完結します。
- 5分:レセコン・GBP管理画面・Search Consoleから先月の数字を抽出
- 10分:シートに数字を入力、CPA/LTV比率を確認
- 10分:3〜6か月の推移グラフで「改善ポイント1〜3」のどれが当てはまるか判断
- 5分:次の月に取る打ち手を1〜2個決める(10記事のどれを読み返すか含む)
この30分を6か月続けると、自院の集客が「感覚」から「数字」に置き換わります。
まとめ:数字で見る経営の習慣化
クリニック集客は「広告費を増やす/減らす」「業者を変える/変えない」といった大きな判断を、感覚で続けると必ずどこかで頭打ちになります。本記事でお伝えした5指標とKPIシートを使えば、月1回30分の作業で経営判断の精度が大きく上がります。
最後に、5指標・3つの改善ポイント・10記事の役割を1つにまとめます。
| 場面 | 見る指標 | 次に読む記事 |
|---|---|---|
| 全体戦略を始める前 | – | P2 クリニックSEO完全ガイド |
| KW土台が不安 | – | C5 キーワード設計はじめの3手 |
| 月次運用を始めたい | 5指標 全部 | 本記事 C10 |
| 規制が不安 | – | P1 医療広告ガイドライン違反8類型 |
| 症状ページを書きたい | 問い合わせ数・指名検索 | C7 違反リスクのない症状ページの書き方 |
| GBPを伸ばしたい | GBPアクション・指名検索 | C6 GBP編集 院長の最初の6手順 |
| 口コミを増やしたい | 指名検索・GBPアクション | C8 クリニックの口コミを増やす12の方法 |
| HPの予約率が低い | 問い合わせ数・CPA | P4 ホームページ改善完全ガイド |
| 広告費を見直したい | CPA・CPA/LTV比率 | C9 SEO vs 広告どちらが正解? |
「測らない経営」から「数字で見る経営」へ。最初の1か月の30分が、6か月後の集客を大きく変えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. KPIシートの数字がどのくらい揃えば、月次運用の判断材料として使えますか?
3か月分で改善ポイントの方向性が見え、6か月分で季節変動を含めた判断ができるようになります。1か月だけでは月の変動が大きく判断材料にならないため、最初に過去3か月分を遡って埋めるのが近道です。Search ConsoleとGBPの過去データは3〜16か月分が無料で取得できます。
Q2. 集客コストに自院でやっている時間の人件費を入れるべきですか?
入れるべきです。院長やスタッフが集客業務(GBP投稿・ブログ更新・SNS運用など)に使った時間を時給5,000円(年収約1,000万円ベース)で概算し、集客コストに含めます。これを入れないと「自院運用は安い」と錯覚し、本来委託したほうが効率的な領域まで内製してしまう判断ミスが起きます。
Q3. LTVが診療科ごとに違いすぎて目安が分かりません。
診療科別の目安は本記事の「指標5:LTV/平均初診単価」章に記載しましたが、自院の数字を半年に1回だけレセコン/電子カルテから算出するのが最も正確です。簡易版でよければ「初診単価×平均再診回数」だけで十分。CPA/LTV比率の判断に使う場合、LTVは多少ざっくりした目安でも比率の方向性は変わりません。
Q4. リスティングをやっていないクリニックでもCPAを測る意味はありますか?
あります。CPAは「広告費÷問い合わせ」ではなく「集客コスト合計÷問い合わせ」で計算するため、SEO業者の月額・GBP代行費・自院の人件費を含めて算出します。広告ゼロのクリニックでもCPAは存在し、むしろ自院運用の効率を見るには重要な指標です。
Q5. 指名検索数を増やすにはどのくらいの期間がかかりますか?
開業時点でゼロまたは月数件しかない指名検索を、月100回以上に伸ばすには通常1〜3年かかります。症状ページの量(20〜50本)、GBPの口コミ数(30件以上・星4.0以上)、地域メディアでの言及(地元紙・タウンサイト)が複合的に効きます。短期間で増やそうとせず、月10〜20%ずつの自然増を狙うのが現実的です。
Q6. 5指標以外にも見るべき数字はありますか?
院長レベルではこの5つで十分ですが、業者やマーケッターに依頼している場合は「サイト流入数」「コンバージョン率(CVR)」「離脱率」「平均ページ閲覧数」などのGoogle Analytics指標を月次レポートで受け取ると良いでしょう。院長自身が毎月見る必要はなく、5指標の数字が悪化したときに業者にレポートを求めて深堀りする、という使い分けが効率的です。
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